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3月のライオン 2人の天才の話

3月のライオンを読み返したくなって、4pほど読んだら先にハチワンダイバーが読みたくなったからハチワンダイバーを読んだ。


ハチワンダイバーの主人公は、奨励会落ちしてくすぶってた凡人だ。家庭や親の事は出てこなかった気がする。凡人だけど将棋が大好きだ。ハチワンダイバーに出てくるキャラはだいたい皆そうだけど。ヒロインのそよに惚れて、愛の力で戦い続け、色んな人に出会い成長し、最後には谷生をも倒す。


谷生も、ただただ将棋を愛していただけのラスボスで、世界に将棋を広めるという目的を果たしたんだし、結果将棋の競技人口が30億人になるというハッピーエンドだ。


なんで先にハチワンダイバーを読みたくなったのか。

 

 


3月のライオンの1巻は、主人公桐山零の生い立ちを説明する。


彼は両親と愛する妹を失い、父親の親友に嘘をついて引き取られた。「将棋が好き」という嘘を。


そもそも本当に将棋が好きじゃなかったのか。友達とはあまり馴染めず、父親と将棋を指すのが好きで、後に義理の父親となる人と将棋を指すのが好きで。


あくまで、好きな父やおじさんとの触れ合うための手段として将棋をしていただっただけで、誰とでも将棋を指したいわけではなかったから、将棋が好きじゃなかったと思ったのだろうか。


全てを失い最後に残った、唯一安心できる大人に拾われるために、将棋が好きかどうかわからないが、好きだと断言した。これはそんな嘘だ。嫌いなのに好きだと言ったのではない。


3月のライオンの2巻は、主人公の将棋への思いと、心の傷を説明する。


全てを失った桐山零は、将棋に全部を賭けた。将棋が出来なければ自分に存在意義はないと怯え、将棋だけに特化した。天才が全てを失わないとなれないものだとは言わないが、他に何もないというのは恐ろしいことで、必死さは人知を超える事がある。


両親や家族がまだ在る義弟と義姉よりも当然のように将棋が強くなったせいで、義弟や義姉は将棋において潰される。彼らには才能が無かったのか。彼らは将棋以外にも、他にも在った。桐山零には将棋しかなかった。


1巻の最初で、義父を将棋で超えてしまい、何のために将棋で戦うのか悩みそうになったところに義姉はつけこもうとする。大した調査力と行動力だ。


心をへし折られそうになりながらも指し続け、打ち倒し、自分の中に獣が棲んでいる事に気づく。将棋で勝たなければ桐山零は生きていけないから、どんな理由があろうが、それで相手がどうなろうが、全力で目の前の敵を打ち倒すのだ。何故ならば、彼には将棋しか無いから。

 

 3月のライオンの3巻は、主人公が閉ざしていた心を開く話だ。壁にぶつかる話だ。師に出会う話だ。


世話をしていてくれたあかりさんが、弱い心を見せてくれたことで、桐山零は、他人にはじめて興味を持ち、他人の事を考えられるようになる。


その夜、彼は忘れていた家族の夢を見る。彼には死体になった3人の、最後の記憶しか残っていなかったが、幸せだった頃の事を思い出す。でもそれは、孤独を打ち消すものではない。むしろ孤独を実感させるものだった。


自分が壊してしまった義姉を守るために、A級の後藤に勝ってやるという身の程知らずの鼻っ柱は、島田8段にへし折られる。そもそも、守ろうとするのも独りよがりだったのだ。そして、将棋の高みで戦うライオンに憧れ、島田という師に出会う。

3月のライオン 4 (ジェッツコミックス)
 


3月のライオン4巻は、主人公が迷う話だ。主人公が、ラスボスの名人と同じく天才だという話だ。


義父や義姉との接触は、あらためてその義理の家が自分の帰る場所ではないということを意識させ、潰れたプライドが邪魔をして居心地のいい場所にも帰れない。


ラスボスの宗谷名人は、あまり深くは語られないが、他人会話する能力さえも捨てて、本当に人としての全てを将棋に捧げたような化け物だ。そして、その宗谷名人と、桐谷零は、共通した感性で将棋を捉えていることがわかる。


けして、これは生まれ持った才能などという生易しいものではない。全てを失った桐谷零が、全てを将棋に捧げることで得た何かだ。


島田もまた全てを捨てて宗谷に立ち向かう。島田も全てを将棋に捧げ、胃を締め上げながら戦っているが、恋人にも逃げられげたと行っても、子供の頃に全てを失って、全てを捧げた桐谷零とは違い、結局島田には宗谷や桐谷零には見える世界が見えなかった。
その島田の横顔を見て、桐谷零は悟る。何のために嵐へ向かい、戦うのか。その答えは己に問うしかないのだと。

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)
 

 3月のライオン5巻は、主人公が少し余裕が出来て、満たされる話だ。


目指すべきものを得た桐山零は、土産物を口実に居心地のいい場所に帰る。少し余裕ができ、周りに眼を少しずつ向けられるようになった。


そして思い出す。自分にはどこにも居場所がなく、将棋しか無かったことを。全てを将棋に捧げてきたことを。


そんな折、ひなが学校でイジメられた子をかばい、イジメの対象になる。いじめられても自分の意見を貫く彼女の尊い強さに胸を打たれ、桐山零はついに大切なものを得る。それは人の心というのかもしれないし、自分よりも大切な人なのかもしれないし、愛というのかもしれない。

3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)
 

3月のライオン6巻は、ついに主人公が走り始める話だ。


愛をついに得たが、桐山零にはそれがそうだとわからない。しかし、ひなによって救われた自分が何をすればその恩を返せるか必死に考えた結果、将棋に勝って金を稼ぐんだと決意する。それだけじゃない。ひなの話をきちんと聞いて何を考えているのか知ろうとするし、周りの人間も使ってひなを助けようとする。自分には将棋しかできない、普通の人には出来ることが自分には出来ないと悩みながら。


そして、誰かのために戦ったから、ひなと二海堂のために戦ったから、桐山零は自らの弱みを克服し、勝ち、壁を一つ乗り越える。

 

3月のライオン 7 (ジェッツコミックス)
 

3月のライオン7巻は、主人公のまわりの話だ。

 
余裕が出てきた桐山零は、周りにも目を向ける。新人王を獲ったことを祝ってくれる人達が居ることに感動する。
 
ひなが救われ、その事に自分は何もできなかったと悔いるが、そんなことはないと言われてまた救われる。
 
そしてラスボスと出会う。宗谷名人は本当に将棋に全てを捧げており、化物だった。

3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)
 

3月のライオン8巻は、主人公が覚醒する話だ。

 

あっさりと、実は桐谷零は、共感するといった普通のことはできないくせに、将棋を通せばある程度他人の考えをトレースして先が読めるという事が明かされる。しかし、宗谷名人との対局は白く澄んでいて、心も読めず、しかしそこには美しい将棋があった。

 

全てを失い将棋に捧げた彼らにとっては、コミュニケーションさえも将棋そのものであり(そういえば桐山零はひなとも将棋で語り合おうとしていた)、はじめて同種と同言語で語り合えたのだろう。経験が遥かに足りなくて勝てなかったが、きっとこれが桐谷零の覚醒となった。

3月のライオン 9 (ジェッツコミックス)
 

3月のライオン9巻は、また主人公のまわりの話だ。


ひなたがイジメから救われたことで、目的を達成した桐山零は、ひなたのそばに居たいと思うようになる。そのためには、ひなたが自分を重荷に思わないよう、今まで以上に頑張ることになり、また一つ桐山零は強くなる。自分で目標を決めたから。

3月のライオン10巻は、主人公が戦う話だ。


桐山零の義母は、もし桐山零がすべてを失っていなかったなら、自分の子どもたちと同じ普通の子供ではなかったかと夢想する。全てを失い将棋に全てを捧げた桐山零の居場所は、その家にはなかったから。


桐山零は幸せに包まれ、はじめてそれを失うことを恐れる。そこに、まさに幸せを踏みにじる最悪の敵が現れる。全力でそれに抗おうとしたとき、その手段はあまりに不器用で実直だった。


3月のライオン11巻は、主人公が戦う話だ。それを周りが支える話だ。


ひなたのためにがむしゃらに戦おうとする桐山零を、周りの人間が支えていく。最悪の敵に対して、初めて桐山零は敵意をむき出しにする。そして、ひなた達は最悪の敵と訣別する。


3月のライオン12巻は、また主人公のまわりの話だ。日常と言ってもいい。


気になるのは島田と林田のどっちがあかりさんと結婚するのかくらいだ。

 


3月のライオンは、俺には2人の天才の話に見える。
全てを失い全てを将棋に捧げ続けている将棋の神、宗谷名人
全てを失い全てを将棋に捧げ、人の心を得たデビルマン、桐谷零


周りに支えられ、成長し、桐谷零が宗谷名人を倒す話なんだと思う。ひなたと幸せになる話なんだと思う。