空白雑記

暇つぶし

手塚治虫と横槍メンゴに感じる魂の話

手塚治虫は俺がマンガにハマったきっかけで、確か父親が三つ目がとおるを買ってくれたのが俺の趣味を決めたと言っても過言ではなくて。小学生の頃はずっと手持ちのマンガを読むしかなかったから、三つ目がとおるとブラックジャックは何百回読んだかわからないくらい読んだと思うんだけど、今読み直すと本当に面白くて。

 

特にどろろ。どろろが本当に魂が込められてて面白いなあって。

 

どろろ 手塚治虫文庫全集(2)

どろろ 手塚治虫文庫全集(2)

  • 作者:手塚治虫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: Kindle版
 
どろろ 手塚治虫文庫全集(1)

どろろ 手塚治虫文庫全集(1)

  • 作者:手塚治虫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: Kindle版
 

どろろも百鬼丸も手塚治虫なんですよ。手塚治虫の自我がモロに出てると俺は思う。

 

百鬼丸は、魔物に捧げられて48も体が欠けていた百鬼丸は、「お前とは一緒に住みたくない」って結局育ての親に追い出されるんだけど、「俺はこんなに体が欠けた出来損ないの人間だ、俺には何も出来ないんだ、まともな人にできることが何もできないんだ、どうかまともに生きるために剣術を教えてくれ」って琵琶法師に懇願するんだよ。泣ける。

 

でも琵琶法師は、「お前さんは自分で頑張ってみな」って突き放して。百鬼丸は我流で剣を磨き、戦い抜いて魔物を倒す。自分に出来ることだけを磨いて戦う。この百鬼丸は、ブラックジャック創作秘話とかを読むに、おそらく生きづらかった手塚治虫自身じゃないのか。泣ける。

 

どろろは、まだ何もできないのに、親の思いを継いで「皆のために戦え」って強制されるどろろは、百鬼丸についていきたがったどろろは、これもマンガやアニメに専念できず社長業をやらされる手塚治虫みたいだ。泣ける。

 

百鬼丸は、「俺は海はなんとなく素晴らしいと思っていたが、いざきちんと感じ取れば海は本当に素晴らしい」ってだんだん世の中にも素晴らしいものがあるって知っていくんだけど、それらは理不尽に打ち捨てられ汚され死んでいく。

 

実際この頃手塚プロダクションは倒産寸前(後に倒産)で、手塚治虫という漫画家のブランドもボロボロになっている苦難の頃だった。その後、ブラックジャックや三つ目がとおる、ブッダで手塚治虫は火の鳥のごとく復活を遂げるわけだが、今読み直すと、ブラックジャックも三つ目がとおるも完全に孤独じゃないか。

 

ブラックジャックにはピノコしかいない。自分のやりたいことを貫き通したブラックジャックは社会の鼻つまみ者だ。今の人間からはかけ離れた知性を持つ三つ目族唯一の生き残り写楽は孤独だ。孤独なプリンスだ。

 

本当に心を打つ傑作とは、自分の心をぶつけた作品だけなんだ。手塚治虫ほどの天才でも、そうなんだ。あれらの作品は手塚治虫の心象風景そのものなんだ。そう感じ取りながら読むと本当に手塚治虫の作品は素晴らしい。

 

 さてこのスピリッツに横槍メンゴの読み切り「ネオダッチワイフ」が載っている。

 

はっきりいってネオダッチワイフ以外はあんまり面白くなくて、結婚アフロ田中で子供(孫)を親に見せた時の情景とかが魂っぽいものを感じたくらい。(マジで結婚アフロ田中の人結婚したんだよな?これ妄想で書いてたら狂気としか言いようがないけど)だけど、スピリッツ1冊くらい400円だ。買え。でないとここから先は読んでもわからん。

 

ネオダッチワイフを読んだ前提で言うけど、ハッキリ言ってこのオタク君には魂を感じない。まるでハリボテ、最近よくある「創作をし続けるものは選ばれた狂気をはらむもの」というハリボテにしか感じない。いや、真実味はあるんだけど、どこか違う。これ由美にとって都合がよすぎるというか。

 

それよりも、この、マンコ見せてセックスさそったらマンコグロいって言われたから、ブチギレてサークルの男全員と寝てサークルクラッシュしたオタサーの姫が、魂というか、呪念というか、とにかく恐ろしい。本当に恐ろしい。魂を感じる。「めっちゃ傷ついたしめっちゃ傷つけた」と過去形で語り、「売れないエロ漫画家だけど一応たまにチェックしてて」、「きっと由美とミユのことにも気付いてて、自分を引きずってることをわかりつつ、そういうもんだよね男女は」と本を閉じて過去に押しやる、この全てが本当に恐ろしい。

 

本当に心を打つ傑作とは、自分の心をぶつけた作品だけなんだ。ネオダッチワイフの由美は本当に恐ろしい。本当に恐ろしい。