空白雑記

暇つぶし

ガセグルメとグルメ論

ガセグルメとは、誇大に美味さを喧伝することだ。

その本質は嘘松(おそ松さんそっくりな美男子同士がじゃれ合うのを見たとか、イケメンに告白されたとか、嘘またはかなりの誇張があるとしか思えないネタ投稿のこと)と同じであるが、グルメに依ることで嘘松よりは批判し辛いものになっている。

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ガセグルメとは情報だ。グルメではなくて情報に依ったものであるから”ガセ”なのだ。

 

ガセグルメといえば、昔渋谷で働いていたとき、渋谷にあるハンバーグ屋がある日を境に超行列店になったことがあった。なんでも、マツコ・デラックスがテレビ番組で絶賛し、また、金賞をとったという。

 

一度だけ食べたことはあり、大して美味くもないと思っていたのに毎日行列ができるようになったので、もう一度食べてみたらやっぱり大して美味くなかった。疑問に思って調べたところ、その金賞というのは「1000円で満足がいくハンバーグ部門」の金賞であり、また、他に某ファミレスもその金賞を受賞していた。

 

しかし、その店に俺がもう一度食べに行った際、おそらくどこか遠くから食べに来たのであろうカップルが、ハンバーグを一口食べるなり、「ほんとにすごくおいしいねー!」「うん!食べに来てよかったね!」と微笑みあったのだ。馬鹿な!と俺は目の前にあるハンバーグをもう一口食べたが、やっぱり大して美味くもないハンバーグだった。

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(ラーメン発見伝より)

ガセグルメもつまりこのようなものだ。ガセグルメを広める側は嘘松的な欲求(RT、いいね稼ぎ)だとしても、ガセグルメを実際に作ったら美味かったと言ってる人達は、つまり情報を食ったのだ。

 

前述のカップルは、たいして美味くもないハンバーグを本当に美味しそうにしていた。多分、本当に美味しかったのだ。美味しいか美味しくないかなんてのは結局主観的なものなのだから、催眠にかかればなんでも美味しい。大好きな彼女と一緒に、話題の店を調べて食べに来るというその体験が既に美味しいのだろう。ガセグルメを作って食べたら美味しかったと言っている人も、大好きな彼女や、愛する息子と一緒に作ったのかもしれない。

 

芹沢は、客のほとんどが味のわからない人間だということに苦悩する。そして、味がわからない馬鹿舌の持ち主については情報を食わせて稼ぎ、本物の舌を持つ客には本物のラーメンを原価度外視で食べさせる事にする。ラーメン発見伝は飲食店経営者の視点なのでこうなるが、客の視点で見れば、本人が満足してうまいと思ってればそれで良いんだ。

 

 

さて、俺は、グルメとは「自分が納得がいくものを食べること」だと思う。

 

グルメとは料理に対する姿勢だ。では、最も単純な料理「卵かけご飯」について考える。

 

「卵かけご飯」という料理名の情報だけで、美味い、好きだ、単純だ、などと評価するのはグルメではない。卵かけご飯の素材となる米、水、卵、醤油、(薬味)と、作り方次第で、千差万別の卵かけご飯が出来上がる。

 

グルメブームの火付け役となった美味しんぼ(初期は超名作漫画である)であればきっとこうだ。まず米を研ぐ前に、米粒を精査して欠けた物などを除く。そして汲みたての清水で上手く研ぎ、竈で炊飯する。炊きたてのご飯に醤油を適量たらして香りを立てたあと、産みたての卵を溶いたものを流し込む。これは源流ともいえるグルメであり、ここまでやることは現実においてはグルメを超えた「美食」だ。ここまでやれば至高の卵かけご飯ができるだろう。

 

逆に、安い古米を炊いてから長時間保温されたものに、スーパーで安売りされている賞味期限切れ間近の卵(冷蔵庫でキンキンに冷えたもの)を割り入れ、醤油を垂らして混ぜれば、最低限の卵かけご飯ができるだろう。

 

俺はこのどちらも自分で作って食べたいとは思わない。俺の食べる卵かけご飯は、コシヒカリの特選米(新潟農家から通販で買ったもの)を浄水器の水と南部鉄器釜を売りにした炊飯器で炊き、炊きたてのご飯にミッドタウンで買ってきた1玉100円くらいのブランド卵と、鮮度の一滴醤油で食べる。これでグルメ界における80点くらいの卵かけご飯になる。材料はすべて常備してあるものなので、揃える手間もない。俺はこれを納得して、うまいと思って食う。それが俺のグルメだ。